2021年8月5日
*時景(SFC)*左上より #01~#06 2021年 印画紙、スキャン
コンセプト
時間は人の記憶に載り、やがて血と肉へと変換されることで、物理的な記録となって世界を歩く。人が介在しなくなった都市(キャンパス)にて流れていた時間は行き場所を無くし、佇み続けている。人の眼に写らぬ、その場に留まり動かずにいる静かな時間を含んだ風景が、本作品の主題である。そして、針穴をレンズとするピンホールカメラを用いて長時間露光を行う手法により、断絶的でない時間の写真を撮影する。
そしてその写真は撮影場所へ溶け込み返還される。建築物の壁面に貼り付けられた写真は、誰の記憶にも記されなかった時間を人に提示する。立ち入れぬ場所にあったはずの失われた時間を人に思わせる。ウィートペーストで貼られた写真は、コンクリートで作られた壁の表情を写し出す。30年前から、キャンパスに流れる時間を抱いてきた壁面の一部となる。そしてまた迫り来る時間によって、貼り付けられた写真も風化してゆく。陽や雨、風らによって形を変化させてゆく写真は、その退廃を思わせる姿でさらなる時間の流れを人に知らせる。
プレゼンテーションのフォーマット
自作のピンホールカメラを用いてキャンパス内の風景を撮影した写真を、A1サイズのポスターイン引き伸ばしプリント。計6枚。それらをキャンパスの建物の外壁に設置。ポスターの貼り付け方法としてウィートペーストを用いる。グラフィティなどの違法的なストリートアートよりも安全かつ合法的なウィートペーストを用いると、小麦粉を水とお湯に溶かしたものを使用するのでキャンパスの壁に落ちない汚れ等を残さずに、水のみで綺麗に撤去可能。ウィートペーストに関する参考リンクを下記に記載します。
ウィートペーストの作り方
<https://www.nytimes.com/2020/06/09/magazine/how-to-wheat-paste-posters.html#:~:text=To%20cook%20wheat%20paste%2C%20use,stir%20continuously%20for%2020%20minutes>.
ウィートペーストポスターの設置
<https://youtu.be/Y-3TXVFADkM>
ウィートペーストポスターの除去
<https://youtu.be/mttTMFfsYjo>
時景(SFC)は作品としているが、もともとはCritical Cyclingにて制作する別作品のための習作と検証の役割を果たしている。そして、それを今学期の脇田研のテーマであった「ストリートアート」の文脈に合うような形態で展示しようとしたものである。
ピンホールカメラの制作に関しては、たくさんの種類と手法が存在する中で以下のリンクのものを参考にすることにした。この例では印画紙を用いて写真を撮影するが、特徴的なのが撮影後にその印画紙を従来の方法で現像等はせず、直接スキャナーでスキャンしてしまう点である。基本的なピンホールカメラは露出時間が多くても数分である。これは、印画紙やフィルムにも性質上の限界によりそれ以上の露出を行うと十分に機能を果たせなくなるからである。ただ、印画紙を従来の現像方法を用いずにスキャンしてしまう場合は、数日あるいは数ヶ月の期間露出させても写真を作ることができる。
LONG EXPOSURE PINHOLE | nicolecroy